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☆研究テーマ

固体表面に形成される超構造/超薄膜、ナノクラスター、表面化合物・合金、原子細線などのナノスケール物質のスピン・電子物性を明らかにすることを目標に研究を進めています。極低温での相転移、表面における磁性、光やトンネル電子励起による表面現象などを解明するために、表面のスピン電子状態を原子サイズの分解能で調べられる走査トンネル顕微鏡(STM)、(スピン分解)光電子分光装置、レーザー光を用いた磁化測定装置などを使用しています。

トポロジカル絶縁体表面電子状態の電子散乱抑制

ヘリカルにスピン偏極した表面2次元金属電子状態があるトポロジカル絶縁体では、表面電子の特異な性質が観察できます。STMを用いた局所準粒子干渉測定を用いて散乱ベクトルを調べ、これを時間分解光電子分光によって測定された表面バンド分散とを比較することで、電子後方散乱の抑制を研究しています。





トポロジカル絶縁体Bi1.5Sb0.5Te1.7Se1.3のSTM像、dI/dV像とそのFFT像、時間分解光電子分光による表面バンド図(矢印はバルクバンド)。100°以上の後方散乱が抑制されています。

トポロジカル絶縁体表面バンド構造の準粒子干渉トンネル分光による決定

STMを用いた局所準粒子干渉測定を用いてバンド間散乱ベクトルを求め、トポロジカル絶縁体Bi1-xSbxのバンド構造を調べています。複数のスピンヘリカルバンドがあるこの系でも、正確なバンド構造が明らかになります。



トポロジカル絶縁体Bi1-xSbxのSTM像(a)、dI/dV曲線(b), dI/dV像(c)とそのFFT像(d)。そのエネルギー依存性から、バンド分散が求まります。



FFT像のエネルギー依存性(a-e)から散乱ベクトル(f)が求まり、表面バンド構造がわかります。

スピン分解走査トンネル分光による表面ナノ磁性

磁性体探針を使った走査トンネル顕微鏡STMをもちいると、磁性体表面のスピン偏極を原子分解能で観察できます。Cu(001)面上のfcc鉄超薄膜では、表面のスピン偏極度が、膜厚や局所原子構造に大きく依存しています。



Cu(001)表面上に成長したfcc鉄超薄膜中には、部分的にbcc鉄やmarten site鉄ができています。

グラフェンの電子状態

光電子分光装置と極低温STMを用いて用いて微傾斜シリコンカーバイド(0001)面上の単層グラフェンの構造とπ電子状態を調べています。基板からの電子がドープされ、ディラック点はフェルミエネルギ―より下がります。また、π電子の散乱が異方的であるので、スペクトル幅とπ, π* バンドが異方的になります。



微傾斜シリコンカーバイド(0001)面上の単層グラフェンのπ電子状態を光電子分光で測定した結果。ディラック点付近にπバンドの曲がりがあります。グラフェンは、基板表面のステップの上にもカーペットのように広がっています。

グラフェンナノリボンの電子状態

光電子分光装置を用いて用いて微傾斜シリコンカーバイド(0001)面上に作製した単層グラフェンナノリボンのπ電子状態を調べています。リボンの幅が狭いとディラック点でバンドギャップが生じます。π, π* バンド


 

微傾斜シリコンカーバイド(0001)面上に成長した単層グラフェンのAFM像とπ電子状態を光電子分光で測定した結果。ディラック点にバンドギャップが観測されています。

トンネル電流励起によって生じる局所表面変化

トンネル電流によって誘起される局所構造変化をGe(001)表面で調べています。バイアス電圧を変化させることにより、局所的に表面超構造が変化します。この現象は、トンネル電流によって生じた Ge(001)表面での電子やホールの励起エネルギーが、表面ゲルマニウム原子間の結合角度を変える運動エネルギーに変換されて生じています。これを応用すると、このページの上のように、20ナノメートル四方の表面にくり返して字を書くことができます。



Ge(001)表面のふたつの超構造とSTMバイアス電圧の関係

Sn吸着Ge(001)表面での原子スイッチ

トンネル電流によってSn-Geダイマーの傾斜角度を変えることにより、表面での電子伝搬を制御することができます。原子位置の変化が電子に対するポテンシャルを変化させ、表面状態1次元電子系の散乱も変化し、定在波が現れたり消えたりします。



Sn/Ge(001)表面に観測される定在波(a,b)がSn-Geダイマーの傾斜角度反転により消え(d,e)ます。これは、表面を流れる電子(c,fの緑の波線)がSn-Geダイマーで反射される場合とされない場合を切り替えているからです。

Pt/Ge(001)表面にできた1次元ナノワイヤ―の電子状態

Pt吸着Ge(001)表面には、1次元ナノワイヤ―列がができます。その表面バンドには、1次元的な金属バンドが複数観察されています。



Pt/Ge(001)表面の1次元表面バンド。二つの1次元金属バンドが観測されています。

Au/Ge表面にできた2次元電子状態

Auが吸着したGe(111)表面とGe(001)表面どちらにも、2次元的な金属バンドがあります。一方、原子配列は、Au/Ge(111)が2次元的で、Au/Ge(001)が1次元的です。






上はAu/Ge(111)表面の2次元電子バンドと原子配列モデル。下はAu/Ge(001)表面にできた1次元ナノワイヤ―構造のSTM像。

レーザー光励起によって生じる表面変化

紫外光を照射後の塩素吸着Si(111)-7×7表面について調べています。照射前に形成されていた表面シリコン塩化物が脱離し、第2層の7×7 超構造が表面に露出しています。この表面では、脱離の際生じた多くの格子欠陥や、 単位胞の半分の電子状態が残りの半分と異なることを反映した明るさの違いが 観測されています。脱離は、紫外光照射によって高いエネルギーに励起されたシ リコン中の電子やホールが表面で緩和することによって生じています。



紫外光を照射後の塩素吸着Si(111)7x7表面のSTM像
強磁性原子層Fe2Nの距離依存トンネル分光

窒素が吸着したCu(001)表面に作製した強磁性原子層Fe2Nでは、探針-表面間の距離に依存して、原子像の形状とトンネル分光が変化します。探針が表面に近い場合には、表面鉄原子の3d電子状態からのトンネル電子を探針が検出しており、鉄原子の表面配列に一致する像が観察されます。一方、探針が表面から遠ざかると、波動関数の浸み出し距離が短い3d電子状態からのトンネル電子が少なくなり、sp電子状態からのトンネル電子が支配的となり、表面原子配列とは一致しない像に変わります。



バルクFe4N の結晶(左図(a))を窒素を含む面が、Cu(001)面上の原子層Fe2Nです。その表面超構造は左図(b,c)のモデルとなります。表面を観察すると左図(d-g)のように、探針-表面間距離に依存してSTM像が変化します。ここで、(d)が距離が短く、(g)が最も長い。左図(h)のSTM像のラインプロファイルのトンネル電流(探針-表面間距離)依存性をみると、距離が遠くなると、二つの山が一つになることがわかります。右図 (a)のトンネル分光と(b)局所状態密度計算の結果はよく一致しています。探針-表面間距離を長くすると、鉄3d由来の状態密度ピークは右図 (c)のように相対的に小さくなり、対応してSTM像が変化します)右図(d-f)。

窒素吸着銅表面の格子ひずみによる電子状態の変化

窒素が吸着した銅(001)表面上には、図のようなナノパターンが生じます。この表面電子状態を高分解能光電子 分光で調べてみると、ナノパターン形成に伴う結晶格子ひずみの影響により、表面の電子状態のエネルギー上昇が観測されています。また、この表面の化学反応性の変化もSTMによって観測されています。



窒素吸着Cu(001)面上の2次元格子ナノパターンのSTM像。窒素吸着によって生じた銅結晶ひずみがこのナノパターンを形成し、電子状態が変化します。

表面合金の金属非金属転移

固体表面に局在した2次元電子系は、構造相転移にともなって金属非金属転移をおこすことがあります。スズ吸着銅(001)表面では、スズの吸着量に応じて表面超構造が異なるいくつかの相が現れ、スズを3/8と1/2原子層(ML)含む表面では、高温で金属的表面が低温で非金属になります。



スズ吸着量の異なるCu(001)面のSTM像。3/8MLと1/2MLが金属非金属転移をおこす。

反強磁性単原子層MnNナノドット配列

銅(001)面上に単原子層の窒化マンガンを作成すると、周期3.5nmの正方格子ナノ構造が形成されます。溝の部分は単原子の深さであり、そこもMnNで覆われています。この周期構造は、銅と窒化マンガンの界面での格子不整合を緩和する機構で形成されます。また、この単層MnNは反強磁性になります。



Cu(001)面上に自己形成した単原子層窒化マンガンナノドット2次元配列のSTM像。単原子層の窒化マンガンが銅表面に3nm四方の島を形成し, 周期3.5nmで規則的に配列しています。

銅表面上の微小コバルトドット配列の作製と磁性

表面磁性の研究用に開発した超高真空温度可変磁気カー効果測定装置を用いて、 直径が5nm程度厚さが2原子層程度のコバルト微小ドット配列を窒素が吸着した銅(001)表面上に作成し、磁性を調べています。ドット自体の超強磁性とそれらが磁気的に結合するために生じる磁性が観測されています。



窒素吸Cu(001)面上のコバルトドット2次元配列のSTM像。窒素吸着によって生じた銅表面のナノメータースケールのパターン上に直径5nmのコバルトドットが7nm間隔で規則正しく配列しています。

極低温での表面超伝導

極低温での表面電子物性研究用に開発した超高真空極低温STMを用いて、主としてトンネル分光による電子状態の温度変化を調べています。超伝導NbSe2表面では、電荷密度波相との境界付近の局所電子状態の空間変化や、表面磁性微粒子による超伝導対破壊を調べています。



NbSe2表面のSTM像。通常の3x3周期の電荷密度波がある超伝導領域と比べて、より長周期の電荷密度波が観測される領域があり、この像では、その境界がみえています。


☆磁性ナノドット配列についての解説1(一般向け)☆

☆磁性ナノドット配列についての解説2(理工系大学生以上向けpdfファイル、約2MB)☆

☆磁性ナノドット配列についての解説3(表面科学25より、pdfファイル、約0.5MB)☆

☆ゲルマニウム表面原子操作の解説1(表面科学25より、pdfファイル、約2MB)☆

☆ゲルマニウム表面原子操作の解説2(日本物理学会誌61より、国立情報学研究所リンク/CiNii PDFファイル、約1MB)☆

☆表面格子歪み誘起する電子状態変化の解説(真空51より、JATAGEリンクpdfファイル、約1MB)☆


☆大学院入学案内

本研究室で大学院生として表面物性、ナノスケール物性を一緒に勉強したい人は、理学系研究科物理学専攻A4コースを受験して下さい。 入学試験についての問い合わせは、理学系研究科大学院係まで。

見学等問い合わせは、小森へ(email: komori_AT_issp.u-tokyo.ac.jp)


Last Update:2017.4.6 by F. Komori